家庭菜園のお悩みを解決!連作障害の予防と対策をご紹介
2020.07.07
家庭菜園では、知らず知らずのうちに畑やプランターで同じ作物を続けて作ってしまい、前回よりも収穫が極端に少なかったり、病気にかかってしまって株ごと始末してしまったという経験はありませんか。それは大抵の場合、連作障害によると思って良いでしょう。連作はしないに越したことはありませんが、対策をしっかりとれば、予防ができるのです。悩みの種の連作障害ですが、予防対策をしっかりすれば大丈夫ですので、予防法をご紹介します。
家庭菜園のお悩み・連作障害とは
連作障害とは、同じ場所(同じ土壌)で年をまたぎ、同じ作物を作ることによって起こる障害のことを指します。家庭菜園では栽培面積が狭いために起こしやすいと考えられます。原因はもちろんある訳ですが、作物の生育が悪い、良い実がならない、酷い場合は病気を呼び込んで枯れてしまうこともあります。
例えば、分類で同じ科の野菜(例:ナス科=ナス、ピーマン、トマト、ジャガイモ)を同じ場所で作り続けると、土壌中の栄養素が偏りバランスが崩れます。同様に土壌中の微生物にも影響を及ぼし、バランスを崩すことに結びつきます。
家庭菜園のお悩み・連作障害が起こる理由
では、家庭菜園での連作によって起きる障害の理由とはどの様なことでしょう。それは家庭菜園に限らず作物を作る土壌に関係します。作物はそれぞれが必要とする栄養分が異なります。植物は栄養素を根から吸収して生長させています。また、植物からも根を通じてある特定の物質(アレロパシー:他の植物に対して何らかの影響を与える物質)を放出しています。ですので、同じ作物を同じ土壌で作り続けると土壌中の栄養分は、その作物が取り入れる、ある一定の栄養分のみが吸収され、土壌中にはその栄養分が不足した状態となり、その作物が必要としない栄養分は取り残されてしまいます。その様な理由によって土壌中の栄養バランスが保てなくなり、微生物も偏った状態となり土壌環境の悪化に繋がり、特に家庭菜園においての連作障害の原因とされている訳です。
家庭菜園のお悩み・連作障害によって起こる障害
家庭菜園などで、毎年同じ土壌で作物を作ることによって起こる連作障害の具体的なものとしては3例が挙げられます。
土壌病害
土壌病害とは、土壌中に潜む病原菌が植物の根から侵入して色々な病気を引き起こすことをいい、土壌伝染性病害ともいいます。植物の根から分泌されるアミノ酸や有機酸などを餌とする微生物が生息しています。同じ科の植物は同じ成分の物質を分泌しますので、連作をすると微生物の種類も偏りが生まれ、病原菌発生の原因ともなります。
主な病例としては、青枯れ病、根こぶ病、萎黄病、つる割病などが発生します。
線虫害
土壌中に生息する肉眼では見えないほどの特定の虫が、連作することによって増えてしまい、作物の生育不良を招きます。「ネコブセンチュウ」や「ネグサレセンチュウ」が代表的な線虫で、作物の根に寄生して作物を弱らせてしまいます。一度発生させると根絶するのが大変難しいので、予防対策をしっかり取ることが大切です。
生理障害
作物が必要とする栄養分は植物により異なり、連作することによって土壌中のある一定の栄養分が過剰になったり欠乏したりと、バランスが崩れるということは前述しましたが、その様な状態の時に気温の変化や水不足などの自然環境に耐えられずに生理的なストレス障害が引き起こされることを生理障害と呼んでいます。作物の種類によって必要とされる栄養分は異なりますので、その作物に適合した栄養素を含む肥料を施肥すれば良い訳ですが、環境要因による障害であるので、その栄養素の過不足の原因が何であるのかを見極めることも必要です。
家庭菜園のお悩み・連作障害が起こりやすい野菜
作物によって連作障害を起こしやすい作物と、ある程度起こしにくい作物とがあります。家庭菜園で作物を育種するのは、本職の農家さんの様にはなかなかうまくはいかないものです。連作障害を起こさないためには、連作はしないことが基本です。
同じ科の作物を同じ場所で作るのはNGですが、何年間かの周期を置けば可能という目安がありますので、栽培計画は基本的に4~5年を目安に組み立てますが、作物によって輪作年に違いがありますので、家庭菜園での指針として一般的な作物の輪作年限を挙げてみました。
作物の輪作年限
科名 | 輪作年限 | 作物 |
アオイ科 | 1~2年 | オクラ |
アカザ科 | ホウレンソウ | |
アブラナ科 | 大根、小松菜、チンゲン菜、水菜 | |
ウリ科 | カボチャ | |
キク科 | シュンギク | |
シソ科 | シソ | |
アブラナ科 | 2~3年 | カブ、白菜、キャベツ、ブロッコリー、カリフラワー |
セリ科 | 人参 | |
ナス科 | ジャガイモ | |
マメ科 | インゲン、落花生、ソラマメ、枝豆 | |
ウリ科 | 3~4年 | キュウリ |
サトイモ科 | サトイモ | |
ナス科 | ピーマン、シシトウ、唐辛子 | |
バラ科 | イチゴ | |
ウリ科 | 4~5年 | 西瓜 |
ショウガ科 | ショウガ | |
ナス科 | ナス、トマト | |
マメ科 | エンドウ |
家庭菜園のお悩み・連作障害の予防と対策
家庭菜園での連作障害を防ぐ方法として農家では土壌消毒などを行う場合がありますが、一般の家庭菜園ではそこまで行う必要はありません。連作障害を起こすのは幾つかの要因がありますが、原因となるものを良く見極めて作物を作る必要がありますので、その予防策を挙げてみました。
輪作の励行
家庭菜園の様にあまり広くない面積で作物を作る場合は、同じ場所に同じ作物を続けて作らないことが大切です。作物を作る場所を幾つかのゾーンに分けて、計画的に一定の周期を空け同じ場所に同じ科の作物を植えない様にします。
用土を入れ替える
連作障害は土壌の状態が悪くなることから発生しますので、家庭菜園の様に狭い畑やプランターなどで野菜を作っている場合はその都度、他の場所からの土を混ぜ込んだり、市販の培養土などを利用して入れ替えます。
バランスの良い土壌作り
耕作地を一定期間休ませる方法もあります。作物を栽培した後の土中の栄養分や微生物などのバランスが元に戻る様にします。その際にはミネラルなどのバランスを整える働きがある、根に根粒菌(大気中の窒素をアンモニア成分に変えて、窒素肥料を作る役目をする)が付いているレンゲソウやマメ科の雑草の堆肥(緑肥という)を土に漉き込んでおくと、微生物が活発に活動をして土壌作りに役立ちます。
間作・混植をする方法
同じ場所に複数の違う作物や植物などを一緒に植えることをいいます。違う植物ならば何でも良いという訳ではありません。一緒に植えることによって互いに生育を助けたり、病害虫を防ぎあったりして影響しあうものを「コンパニオンプランツ(共生植物)」と呼んでいます。
例えば、ウリ科の作物の側には連作には比較的強いネギ類、ナスやトマトには菌根菌が養分を吸収しやすくする働きのあるラッカセイなどがあります。
接ぎ木苗を植える
家庭菜園での連作障害を防ぐ方法としては一番手っ取り早い方法です。病害虫を防ぎやすい台木にして作物の苗を接いだものです。根になる部分が元々別の植物ですので連作障害を起こし難いものです。他の苗より少々値段が高いのがネックです。
まとめ
家庭菜園での連作障害には様々な原因が重なって発生する場合があります。どの様な原因で連作障害が起こるのかを良く知った上で予防策を取る必要があります。作物を作る上で大切なのは土壌の整備です。作物を植える前後に堆肥や腐葉土など有機物質を土に混ぜ込んだおくのも連作障害を抑止する効果があるとされています。