育てやすい?くちなしの花の育て方とは?
2023.03.07
クチナシは、日本で古くから栽培されている花木の一つです。初夏から梅雨の時期にかけて甘い香りのする美しい花を咲かせ、園芸家の間でも好まれています。ぜひご家庭でクチナシを育ててみてください。今回は、クチナシの特徴や育て方、お手入れ方法、増やし方などをご紹介します。
くちなしの花とは?
くちなしは、クチナシ属の常緑低木です。日本や中国など東アジアが原産で、6月から7月にかけて白い花を咲かせます。樹高は1~2mで、幅広い庭で育てやすいでしょう。庭植えだけでなく、鉢植えも可能です。最も多く栽培されている品種は八重咲きの「オオヤエクチナシ」です。
その他、「コクチナシ」「マルバクチナシ」などがあります。オオヤエクチナシは実をつけませんが、秋になると実をつけます。名前の由来は諸説ありますが、よく知られているのは、熟しても実が割れず、口が開かないことから「くちなし」と呼ばれるようになったという説です。
また、くちなしの香りも大きな魅力の一つでとなっています。クチナシ、キンモクセイ、ジンチョウゲは「三大香木」と呼ばれることもあります。開花期には甘い香りを楽しむことができます。
くちなしの育て方
ここではくちなしの育て方について解説していきます。
用土づくり
腐植を多く含み、通気性と保湿性に優れた腐植質土などを混ぜた黒土は、くちなしの栽培に適しています。このタイプの土壌は、しばしば「軽い」土壌と呼ばれますが、実は他の土壌よりもリンの含有量が多く、くちなしの生育に最適なのです。腐植土は、水を好む植物に必要な栄養素の放出を促進し、適切な排水を維持するため、くちなしの栽培に最適な土壌と言えます。
苗木の選び方
くちなしは、苗から購入して育てます。葉がよく茂り、ひょろひょろしていない木を選び、葉が色あせているものや樹勢の弱いものは避けます。苗木を選ぶ際には、茎の様子や葉の数をよく見てください。元気な苗木は、茎に8~10枚以上の葉がついています。葉が薄緑色で、枝が健康そうで、全体的に新芽を支えられるような構造になっている木を選びましょう。
寒さや乾燥に強い品種とそうでない品種があるので、苗木を選ぶ際には品種の丈夫さを考慮しましょう。
植えつけ
くちなしの植え付けは、春と秋が適期です。地植えの場合は、根鉢より一回り大きい、直径・深さともに30cm程度の穴を掘る。苗木の根を傷つけないように注意しながら、鉢から苗木を取り出します。植え付け時には、根鉢の3分の1程度を割って植え付けます。
植え付け後、根の成長を促すために、植物専用の養液「HB-101」を1000倍に薄めた水を苗木に十分に与えてください。地植えの場合は、根の奥まで水が浸透するようにしばらく水を流してください。鉢植えの場合は、鉢底から水が出るくらいにし、さらに根付くまでは倒れないように支柱を立てておくとよいでしょう。
また、クチナシは定期的に水やりをすることで、より大きく健康的に成長します。
水やり
くちなしは乾燥を嫌います。鉢植えの場合は、土の表面が乾いてきたらたっぷりと水を与えてください。夏場は土が乾きやすいので、朝晩2回の水やりが必要な場合もあります。
春と秋は、1~2日に1回が目安です。地植えの場合は、根付くまでは土が乾いたら水やりをします。一度根付くと、水やりはほとんど必要ありません。
ただし、気温が高く土が乾きやすい時期は、土が乾いたら水やりをします。また、株元をわらや腐葉土で覆うのもおすすめです。マルチングは保水性を高めるほか、雑草の種子の発芽を防ぐため、雑草の抑制に役立ちます。
乾燥した時期には、さらに土壌の乾燥を防ぐことができます。さらに、土壌の水分量を把握し、それに応じて植物の水やりの頻度を調整することが重要です。
肥料
植え付け時に、顆粒タイプの「HB-101」を、元肥として土に混ぜます。その後、植物の生育に応じて追肥を行います。地植えの場合は、開花後の7月頃に元肥を施し、その後2~3月頃に追肥をします。
鉢植えの場合は、3月から10月にかけて、2~3か月に1回、緩効性肥料を施します。ただし、真夏の追肥は植物への負担が大きくなるため、避けてください。
くちなしを管理するには?
ここからはくちなしを管理するための方法について紹介していきます。
剪定
くちなしの木は自然に形を整えていきますが、ひっこんでいたり、不自然に伸びている部分があれば、剪定をする必要があります。剪定のタイミングは、花が終わった直後が最適です。クチナシは年に2回、7月と9月に花芽をつけます。
早めに剪定しないと、うっかりして花芽を間違えて切ってしまうことがあります。夏にできた花芽を切って咲かせないと、秋に新しい花芽がつきにくくなることがあります。剪定は丁寧に、計画的に行うことが大切です。剪定をするときは、特に樹の上部や幹の近くは控えめに切りましょう。
内側に伸びた枝、枯れた枝、絡まった枝などは、根元から切り落とします。
病害虫対策
くちなし栽培でよく見かけるのは、クチナシムシとカイガラムシの幼虫です。クチナシにこれ以上被害が出ないように、見つけ次第、除去・駆除しましょう。また、春になるとアブラムシが発生することがありますが、これは幅広い植物に発生する昆虫です。
柔らかい新芽や葉に付着して汁を吸い、ウイルス性の病気を媒介することもあります。アブラムシが相当数発生すると、くちなしに大きな害を及ぼすことがあります。そのため、春先にはくちなしの保護に万全を期すとともに、すでに発生しているアブラムシを駆除することをお勧めします。
害虫駆除効果のある特殊な薬剤を使用することも可能です。
植え替え
鉢植えのクチナシは、2~3年に一度、植え替えをする必要があります。そのままにしておくと、根詰まりを起こして生育が悪くなります。植え替えの際は、根を傷つけないように丁寧に扱い、根鉢を崩さないように注意しましょう。
枯れて黒くなった根は切り落とし、植え替えの際は必ず新しい土を入れます。植え付け時と同様に、弱酸性でローム質の、水はけのよい土が適しています。また、植え替えの際には、マグァンプKなどの緩効性肥料を一握りほど加えておくとよいでしょう。
植え替えの際は、根についた古い土を落としすぎないように注意しながら、根鉢を軽くほぐします。特に成熟したクチナシは根が大きいので、植え替えの際に注意が必要です。
挿し木の方法
くちなしの挿し木は、6月から7月に行います。今年伸びた枝の中から健康なものを選び、鋭利なハサミで10cm程度、挿し芽の1.5cm下の長さに切ります。挿し木をしたら、植え付ける前にぬるま湯に1時間程度つけておきます。
その後、発根を促すために下葉を丁寧に取り除き、上の芽が土の表面ぎりぎりになるように挿し木をします。一般的には、明るい日陰に置き、日当たりのよい場所に移すまでは、十分に水を与えておくことをお勧めします。
まとめ
クチナシは、大きくなりすぎず、剪定もあまり必要ないため、幅広い庭で育てやすい植物です。また、可憐な花と芳しい香りで道行く人を楽しませ、日々の喧騒から解放されるひとときを過ごせます。クチナシは手入れが簡単な植物なので、初めてガーデニングをする人からベテラン園芸家まで、どんな庭にもぴったりです。ぜひ、クチナシを庭や鉢植えで育てて、その美しさと安らぎを体験してください。